Home > IPv6実践導入ガイド > 02 IPv6の実装に必要な知識
IPが受け持つ最大の役割は、他のネットワークに対するルーティングである。
ルーティングとは宛先ネットワークに対する、ネクスト ホップを管理する事に他ならない。
一番身近なネクスト
ホップはデフォルト ゲートウェイだ。
RAは、そもそもルーターなどのL3中継装置が広告しているので、IPv6アドレスを自動構成しているノードではデフォルト ゲートウェイはRAで構成される事になる。
IPv4では、ネクスト ホップはグローバル アドレスか、ローカル アドレスのいずれかを割り当てるのだが、IPv6の場合は、GUA/ULAだけではなく、リンクローカルアドレスを割り当てることも可能だ。
IPv6では、リンク ローカル アドレスでもネクスト ホップが指定できるのがIPv4との違いだ。
IPv6アドレスを自動構成したPC等のノードで、ipconfig(unix系であればifconfig)コマンドで自動構成されたIPv6アドレスを見ると、デフォルト ゲートウェイはリンクローカル アドレスが割り当たっているので、一度確かめて頂きたい。
手動でIPv6アドレスを構成する場合は、IPv4と同様にのIPv6アドレスとデフォルト ゲートウェイも設定するわけだが、IPv6の場合はGUA/ULA/リンクローカル アドレスのいずれかを割り当てれば外部のネットワークと通信する事が出来るようになる。
リンクローカル アドレスは、リンク内でユニークであれば良いので、デフォルト ゲートウェイを受け持つL3中継装置では、複数のポートに対して同じリンク ローカル アドレスを手動で割り当てることが許されている。(L3中継装置の実装依存なので、リンク ローカル アドレスを手動設定できない機器も存在している)
この仕様をうまく利用すると、デフォルト
ゲートウェイを受け持っているL3中継装置ポートのIPv6アドレスに「fe80::1/64」を割り当てる事が出来る。
こうすれば、手動でIPv6アドレスを割り当てる際に、デフォルト
ゲートウェイには「fe80::1」を指定すれば良いので、タイプミスでルーティングが出来ないといったトラブルを軽減する事が出来るのでお勧めだ。
実際の運用では、L3中継装置にもGUA/ULAを割り当てることになるので、「GUAプレフィックス::1」「ULAプレフィックス::1」も割り当てる。
IPv6のL3中継装置のスタティック ルーティングもリンク ローカル
アドレスを使う事が出来るので、デフォルトゲートウェイには「fe80::1」を割り当てれば良いし、それ以外のルーティングであれば、「fe80::2」「fe80::3」と順次リンク
ローカル アドレスを与えていけばよい事になる。
IPv6
L3中継装置の各ポート割り当てるGUA、ULAのインターフェイスIDは、リンクローカルと同様にし、「GUAプレフィックス;;リンクローカル
アドレスのインターフェイスID」と「ULAプレフィックス::リンクローカル アドレスのインターフェイスID」としておけば、経路確認時にも困る事は無い。
例えば、以下のようなネットワークの場合は、IPv6のL3中継層にこのようなIPv6アドレスを割り当てることになる。
<サイトプレフィックス>
GUA 2001:db8:101d::/48
ULA
fd53:2248:8ad4::/48
<セグメントA>
GUAプレフィックス 2001:db8:101d::/64
ULAプレフィックス
fd53:2248:8ad4::/64
<セグメントB>
GUAプレフィックス 2001:db8:101d:1::/64
ULAプレフィックス
fd53:2248:8ad4:1::/64
<セグメントC>
GUAプレフィックス 2001:db8:101d:2::/64
ULAプレフィックス
fd53:2248:8ad4:2::/64
ルーター1のセグメントA側ポートに割り当てるIPv6アドレス
GUA:
2001:db8:101d::1/64
ULA: fd53:2248:8ad4::1/64
リンク ローカル アドレス: fe80::1/64
ルーター2のセグメントA側ポートに割り当てるIPv6アドレス
GUA:
2001:db8:101d::2/64
ULA: fd53:2248:8ad4::2/64
リンク ローカル アドレス: fe80::2/64
ルーター2のセグメントB側ポートに割り当てるIPv6アドレス
GUA
2001:db8:101d:1::1/64
ULA fd53:2248:8ad4:1::1/64
リンク ローカル アドレス: fe80::1/64
ルーター2のセグメントC側ポートに割り当てるIPv6アドレス
GUA
2001:db8:101d:2::1/64
ULA fd53:2248:8ad4:2::1/64
リンク ローカル アドレス: fe80::1/64
[ L3中継層に割り当てるIPv6アドレス ]
[ ルーティング テーブル ]
L3中継装置 | 宛先 | 宛先IP | ネクスト ホップ |
ルーター1 | WAN | default | WAN回線 |
セグメントA | 2001:db8:101d::/64 | ローカル ポート | |
fd53:2248:8ad4::/64 | ローカル ポート | ||
セグメントB | 2001:db8:101d:1::/64 | fe80::2 | |
fd53:2248:8ad4:1::/64 | fe80::2 | ||
セグメントC | 2001:db8:101d:2::/64 | fe80::2 | |
fd53:2248:8ad4:2::/64 | fe80::2 | ||
ルーター2 | WAN | default | fe80::1 |
セグメントA | 2001:db8:101d::/64 | ローカル ポート | |
fd53:2248:8ad4::/64 | ローカル ポート | ||
セグメントB | 2001:db8:101d:1::/64 | ローカル ポート | |
fd53:2248:8ad4:1::/64 | ローカル ポート | ||
セグメントC | 2001:db8:101d:2::/64 | ローカル ポート | |
fd53:2248:8ad4:2::/64 | ローカル ポート |
このように、1台のL3中継装置に「fe80::1」を複数割り当てる事が出来るので、各セグメントに配置したノードで、手動IPv6アドレスを設定する際には、デフォルトゲートウェイは常に「fe80::1」を設定すればよいのでミスが起きにくい運用が可能となる。
いくらルーティング時のネクスト
ホップ指定が簡単だと言っても、宛先ネットワークの64ビットのプレフィックスをスタティックに記述するのはタイプミスによるミスが起きやすい。
この問題を解決するのが、IPv4でもお馴染みのダイナミックルーティングだ。
IPv6にもIPv4と同等のダイナミックルーティングが用意されており、ダイナミックルーティングの使い方もIPv4とほぼ同じなので、IPv4で学んだダイナミックルーティングの知識をそのまま使う事が出来る。
[ ダイナミック ルーティング プロトコル ]
IPv4 | IPv6 |
RIPv1/RIPv2 | RIPng |
OSPFv2 | OSPFv3 |
BGP-4 | BGP-4+ |
EIGRP | EIGRPv6 |
IPv4とIPv6は別物なので、ルーティングの管理も別にしなくてはならない。
つまり、ルーティングに関して言うと、IPv4とIPv6の2重管理になってしまうのが悩ましい所でもある。
ダイナミックルーティングにする場合、IPv4で使用しているダイナミック ルーティングプロトコル相当のIPv6ダイナミック ルーティング
プロトコルを使用し、IPv4と同じ経路が選択されるように重み付け等の設定をしないと、トラブル時の対応が厄介な事になる。
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