2011/03/11 に宮城沖で M9.0 と言う世界最大級(4番目規模)の地震(「東北地方太平洋沖地震」改め「東日本大震災」 マスコミとかは東北関東大震災とか東日本大震災とかと呼んでいます)があり、多くの方の尊い命が奪われました。心からのご冥福をお祈りします。
地震発生時には、僕は東京都内の職場で仕事しており、震度5強の揺れを経験しました。震源地に近い所では震度7や津波で甚大な被害に見舞われている地域がたくさんあります。
首都圏は大地震に見舞われる宿命にあるので、準備もそれなりにしていましたし、徒歩での帰宅準備をしていたので実際に徒歩帰宅しました。
この経験を通して、(あくまで僕の私見ですが)気が付いた事を書いておきます。
その昔「グラッと来たら火を消せ」みたいな標語がありましたが、これははっきり言って危険なだけです。そもそも立つ事すら無理ですし、移動するのは身を危険にさらすだけです。
ガスは大きな揺れを感知すると即時供給停止しますし、電気熱源系の製品も転倒したら止まるようになっています。間髪入れずに机の下とか落下物や倒壊物から身を守れるところに身を隠して身の安全を確保してください。
避難路を確保するために扉を開けろとも言われますが、最近竣工したビルの非常扉はパテで浮かせてあるので、ビルが少々変形しても非常扉が開かなくなるって事にはならないようになっています(一応造作は確認して下さい)。
ウチの職場でも、大きな揺れが来ている間、椅子に座ったまま机にしがみついているのがやっとって人が何人もいましたが、日頃から「今、大きな地震が来たらどう行動するか」を時々考えて脳内シミュレーションをしておくだけでとっさに行動が出来ます。
これは、職場にいる時だけではなく、街中を歩いていたり、車を運転している時であったり、電車に乗っている時にもシミュレーションしておくことをお勧めします。
おかげで僕は机の下に瞬時に身を隠すことが出来ました。
大きな地震の後は、必ず大きな余震が来ます。地震発生から2-3時間は大きな余震が来る危険時間帯なので、この間は下手に動くとかえって危険です。実際に地震発生から1時間以内に何度か机の下に身を隠しました。
ガラスが割れたり、什器が倒れたりしているので片付けをしたくなりますが、危険な時間帯は窓ガラスの近くとか、転倒しそうな什器からから離れて、いつでも身の安全を確保できるようにしておくことが大切です。
ウチの会社でも外に出ようとしたり、割れたものを片付けようとしている人がいましたが止めました。
特に、オフィス街で外に出ると、余震で割れたガラスの雨にさらされることになりますし、住宅街でも瓦の落下や壁の倒壊に巻き込まれる危険性が高いです。
逆に外を歩いている場合は、比較的新しそうな建物に逃げ込むのが安全です。
ただし、海岸沿いにいる場合は話は別です。木造家屋は津波で簡単に持って行かれますし、今回の地震では鉄筋コンクリートのビルも3Fくらいまで津波にのみこまれました。船や車、津波に押し流されてきた建物が建物にぶつかるので、鉄筋コンクリートのビルであっても安全であるとは言い切れません。
海岸から数キロ以内にいる場合は、安全を確認しつつ急いで高台に避難してください。
建物内あるいは近隣で火災が発生したとか、古い建物で倒壊の危険性があるとかの理由がない限り、しばらく居座るのが安全です。
この10年位に竣工した建物であれば、震度6程度で倒壊する心配はありません。古い建物だと余震で倒壊する危険があります。本震より余震が大きくなることはまずありませんので、建物に大きなひびとか多数のひびがが入ったとかの異常が起きていないのであれば居座る方が安全です。
地下街や地下鉄の駅にいる場合は、地下と言う閉塞感から危険を感じてすぐに脱出したくなりますが、地下は地上の建物より頑丈です。
地上の建物は壁や柱でしか地震のエネルギーに対抗する術がありませんが、地下の場合は周りを覆っている土全てが強度材となるので、地上の建物より遥かに耐震性は高いのです。
慌てて、出口に殺到すると(多くの人がこのような行動に走ると思いますが、それに惑わされてはいけません)、人に押されて圧死するリスクが高くなるので、まずは安全な所に逃げ込んで様子を観察してください。
火災が発生している場合は、有毒ガスを吸引すると危険なので、状況をよく観察して一番安全だと思う行動をとって下さい。
TV は視聴率至上主義なので、特異点ともいえる悲惨な状況をエンドレスに流し続けるだけです。情報収集のために TV を見続けるのは不安を募らされるだけで、当事者が今必要としている情報を得るメディアとしては役に立ちません。(第三者が娯楽的な感覚で「大変なことになっているぞ」と TV に食い入る情報でしかないです)
1時間に1度程度であれば、TV からの情報収集は良いですけど、常時得る情報にはラジオが最適です。音として情報が得られるので行動に制限が入りませんし、状況に変化があった時に必要な情報を提供してくれます。
意外と便利なのがインターネットです。被災直後でも日本国外にサーバーが設置されているサイトは機能し続けますし、主要所の Web サイトは、データーセンターにサーバーを設置していますので、ダウンすることはまずありません。
SNS も情報収集には便利ですが、デマノイズが混ざる危険性が高いのでそのあたりを注意して使う分に強力な情報収集ツールになります。
今まで何度も我々が経験しているように、大地震が発生すると電話は輻輳を起こして無力化しますし、本当に緊急度が高い通話にも支障が出るので、極力電話による安否確認は控えるのが皆の為でもあります。
日頃から準備しておきたいのが、安否確認サイトの利用です。DoCoMo/au/Softbankは地震直後から安否確認用の掲示板をスタートしましたし、Google も安否確認サービスを提供しました。
職場のルールとして指定の安否確認サイトに状況を書き込むようにしていれば、使い物にならなくなる電話に頼らなくても安否確認が素早く出来ますのでお勧めです。
便利だったのが twitter と facebook です。様々な情報も流れてきますし、友人知人のツイートや投稿を見れば安否や今何処でどのような行動をとっていのかがすぐわかります。
今回首都圏を襲った震度5強であれば、翌日にはある程度の交通機関が復活しますし、この程度の地震であれば大規模火災もまず発生しません。
と言う事は、慌てて徒歩で帰宅するのは得策ではなく、一晩職場で過ごして翌日に公共交通機関で帰宅するのが一番です。
コンビニエンスストアに行けば、ある程度の食料と飲料水は調達できます(僕は買い出し部隊ではなかったのですが、おにぎりとかは売り切れだったそうです)。
電気と水道が生きていれば、カップラーメンとかインスタント食品で一晩過ごすのは苦にならないですね。
今回僕はあえて徒歩帰宅を選択しましたが、組織によっては即時帰宅命令が発令され、やむなく徒歩で帰宅した方も多くいらっしゃいました。
僕はそれなりの準備をしていたので徒歩帰宅が出来ましたが、何の準備もなく徒歩帰宅するのはかなり無謀です。
帰路中に暖を取るのに不十分な服装で震えながら歩いている方を何人も見ましたし、革靴やヒールで苦しそうに歩いている方も数多くいらっしゃいました。
都内は大渋滞で車での移動は事実上できません。これは車での帰宅が出来ないというだけではなく、緊急車両が身動きできないと言う事を意味しています。自分の身は自分で守るの大原則になるって意味になります。
火災が発生して建物に居座るのが危険な場合や、公共交通機関の復旧見通しが立たない状況であれば、徒歩で帰宅することを決断するしかありません。
徒歩で帰宅する場合のポイントを経験を交えて書いておきます。
帰宅路の沿線になる方は、徒歩帰宅の方に力を貸してあげてください。今回「トイレでお困りの方は使ってください」とプラカードを書いて道行く人に声をかけている方がいらっしゃいました。僕は利用しませんでしたが、涙が出るくらいうれしかったです。
・帰宅経路の確認
まず大切なのは、帰宅経路の確認です。
僕が歩いて帰宅している時に反対方向の人が混ざっていました。位置確認と帰宅ルートが確認できておらず、人の流れについていきたそうです。
車でいつも通っているから地図なんかいらないと思われるかもしれませんが、車でいつも通っている道が安全だとは限りません。倒壊や火災、浸水で歩いて移動できるとは限らないのです。広範囲で迂回路が選択できるような地図が必要です。
僕は「帰宅支援ハンドブック」を事前に準備していたので、これに従って帰宅しました。
今回歩いた経験から言うと、日頃運動していない人(僕もその一人)が徒歩で帰宅できる限界は25km圏内だと思います。
・持ち物
地図:
事前に準備しておくことお勧めします。コンビニとかにある地図はあっという間に売り切れます
水:
冬場であれば0.5-1.5Lもあれば十分でしょう。あまり多く持つと重くて辛くなります。夏場あは発汗が多いので 2L
くらいは準備しておきたいです。
移動中のコンビニやガソリンスタンドで水の補給はできる可能性は高いので、とりあえず 1L を持って移動開始するのもいいかもしれません。
エネルギー源:
僕は移動中にコンビニでチョコレートを3枚購入しました。水なしで摂取できるエネルギー源があると心強いです。
携帯電話:
音声通話には使えませんが、インターネットアクセスや twitter とかのデーター通信には重宝します。GPS
付の機種であれば現在位置の確認にも使えます。そういった意味ではスマートフォンが最強ですね。余談ですが、Willcom の PHS
は、加入者が大幅に減ったためか比較的音声通話が良くつながりました。
スマートフォンであれば、バッテリー切れの心配も高いのでモバイル充電キットは必需品ですね。コンビニでは携帯電話の緊急充電キットがあっという間に売り切れていました。
家族と twitter の相互フォローと facebook の友達申請していれば、安否確認や状況確認が簡単にできますのでお勧めです。
タオル
冬場でも暖かい服装をしていると、歩いているうちに額に汗が滲んできます。夏場ではタオル数枚は必需品ですね。
ポータブルラジオ:
電池/手回し充電兼用タイプがお勧めです。電池を数セットもっていれば普通のラジオとして使えますし、電池が切れても手回ハンドル発電すればラジオ聞けます。
ちなみに僕が自宅と職場に置いている Sony の
ICF-B01(生産終了)は、AM/FMラジオ以外に懐中電灯にもなりますし、携帯電話の充電器にもなるって優れものです。(エネループでも動作しました)
これを書いている時点では、後継機種として
ICF-B02(現行機種はICF-B03)
が販売されています。
懐中電灯:
電気が生きているのであれば街灯がある場所では不要ですが、停電になったとか、街灯が無い所では足元の確認が困難になります。
小さくても良いので、懐中電灯が1つあると心強いです。
僕は職業柄配線確認とかで机の下とかに潜る事があるので(ネットワーク屋です)、単四x2本のミニマグライト
2AAA が常に鞄の中に入っています。サイズもコンパクトで鞄のペン刺しにスッキリ入るのでお勧めです。
マスク
阪神淡路大震災の時に崩れたビルが舞い上げるコンクリートダスト対策でマスク着用が当たり前のようにされていました。
今回はビルとかの倒壊は無かったのですが、冬の乾燥した冷たい外気を長時間直接吸うとのどが痛くなったりしますし、避難所に一時休憩で立ち寄る際にもマスクがあると心強いです。
・移動時の装備
革靴/ヒールで徒歩帰宅するのは無謀
職場に徒歩帰宅用に置いていたスニーカーがダメになっていたので仕方なく革靴で歩きましたが、1/3もいかないうちに苦痛で顔がゆがむほど足が痛くなりました。運良くスニーカーが調達できましたが、革靴で全行程を歩くのは無理だったと思います。
履きなれたスニーカーを一足職場に置いて、使えるか時々チェックするのが良さそうです。
手提げはダメ
飲料水を手提げ紙袋に入れて移動を開始したのですが、ほどなく腕と肩が痛くなりました。冬場だったので手袋着用していたので手は痛くなかったのですが....
水を肩掛け鞄に移動しましたが、小物が手提げ袋残っており片手がふさがりどうしても機動力が下がります。
最強は手ぶらですが、飲料水とかある程度の荷物はあるので理想はリュックです。ただし、安物のリュックだと意外に疲れるので、ちゃんとしたリュックを準備して職場に置いておくのがお勧めです。
気候に合わせた服装
冬場であれば、十分に暖かい服装が必要です。
日中が暖かくても、日が落ちると一気に冷えます。逆に夏場は直射日光による体力の消費にも注意してください。暑くても日傘とか直射日光を遮る手段がないのでしたら長袖をお勧めします。
雨具
雨が降る中を歩いて帰宅するのは困難ですが、どうしても強行する必要があるのでしたら雨具は必需品です。
傘は片手がふさがりますし、通勤状態の帰宅難民の列の中では邪魔になりそうです。リュックを背負っているのであればポンチョがあれば雨天での移動も楽です。野球帽をかぶってフードをかければ視界も十分確保できます。
ポンチョって誰もが持っているものではないので、傘でも何とかなるかと思いますが.... 雨天の徒歩帰宅の経験がないのでこの辺りは不明です。
・歩き方
先が長いので、いつもの歩行速度より意識的にペースを落として歩きました。疲れが一気に来ると厄介なので、1時間に1回程度の休憩をはさんで歩いていたのですが、後半は30分ごとの休憩を体が求めてくるようになりました。
休憩をすると、次の歩き出しがが辛いのですが、これは暫く歩くと慣れるので、歯を食いしばって歩いてください。
長丁場になるので、慌てず休憩を取りながら移動するのが良いです。
ちなみに僕の場合は全行程23.8kmでした。19:00 に出発したので、25:00
到着を予想していましたが、実際に到着したのは 26:30(2:30AM) でした(ラスト4kmは車でピックアップしてもらいました)。
休憩を入れると、3km/h あたりの計算になります。
都内最速の移動手段は自転車だと思いますが、思うように走れないのと、置き場に困ることもあるのが悩ましいですね。
今地震が起きたらどうするかって脳内シミュレーションを日頃からしておくことをお勧めします
職場編
電話に依存しない安否確認方法の事前取決め
ラジオ(手回し充電できるタイプが望ましい)
:携帯電話(スマートフォン最強)とモバイル充電グッズ
飲料水(2Lくらいは常時ストック)
水なしで摂取できるエネルギー源(チョコレートがお勧め)
タオル
リュック(安物は疲れるので良い物を)
履きなれたスニーカー(ソールが腐るので時々チェックが必要)
徒歩帰宅に必要な地図
雨具(ポンチョが良いけど、傘でもなんとかなる?)
使い捨てのマスク
懐中電灯
お薬手帳(薬が切れると命にかかわる持病を持っている方は特に)
乾電池 / エネループ+充電器(モバイルバッテリー)
自宅編
水道/ガス/電気のライフラインが止まっても、電気は1週間程度で復旧します。水も3日-1週間くらいで給水車が回るようになります。ガスはしばらく復旧しません(実家が阪神淡路大震災で被災してその時の経験)
家族との緊急時の連絡方法取決め(電話は使えない想定で)
拙宅では twitter と facebook 実家を連絡用に設定しています
避難場所の確認
飲料水(2Lのペットボトル ミネラルウオーター6本入りを4-6ケースくらい)
1-2週間分
台車(水を運んだりと重量物運搬には何かと便利)
給水配給時の受水用の10-20Lクラスのポリタンク(登山グッズとして売っています)
非常食(インスタントラーメンが便利)
1-2週間分
熱源(カセットコンロとかお湯が沸かせるものが必要)
IH or ホットプレート(電気が復旧した以降の熱源)
簡易トイレ(水が止まると水洗トイレは使い物になりません)
ガソリンは常に満タンに
避難時に使用するリュック
ライターなどの着火道具と燃料
懐中電灯/電気式ランタン(ロウソクは火事の原因になるのでお勧めしません)
その他必要と思われるもの
キャンプ用品とか、バーベキュー用品が意外と役に立ちます。
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